いにしえのバイクたち【ラビット S1/D11】

2019年4月6日

レガシィ、インプレッサなどのボクサーエンジンでお馴染みのスバル(富士重工業)。現在は自動車の印象がありますが、大昔はバイクを作っていました。というか、もともと戦闘機などの航空機を作っていたスバルですが、その開発者たちは、第2次世界大戦終戦後に、職を失いそれがバイク作りと大きく関わっているとか。

スバルの作った大ヒットスクーター『ラビット』

ではなぜ航空機の開発者たちは職を失ったのかというと、戦争中は戦闘機の開発で需要がありましたが、ゼロ戦のような完成度の高い航空機を日本に作られてはたまったもんじゃない! と感じたアメリカが、もう二度と日本人に良い物を作らせないために、航空機の開発を断念させた、あるいわ圧力を与えたといわれています(このあたりの話は勉強不足なので、間違いがあるかもしれませんが、Twitterやメールフォームでそっとご指摘願います・・・)。

そんなこんなで例外なく、戦時中はスバルも航空機はもちろん、戦争兵器などを作っていたと予想しておりますが、終戦間もない1946年11月に富士産業(現在のスバルのことです)の太田工場にて、一台のスクーターが産まれました。それが『ラビット S1/D11』です。

ヴィンテージスクーターやヴィンテージバイクに興味がある方なら『ラビット』の名はご存知かと思いますが、日本を代表するスクーターであります。現在ではスクーターといえばなにを想像しますか? PCX、シグナスX、リード、チャンプ、ジョグ、ディオ、スクーピー、ビーノ・・・実に何台もの車種を思い受けべられるでしょう。

しかしこのラビットは、長年スクーターの代名詞となっていたわけです。もっともポピュラーなスクーター。それがラビット。

初代ラビットは流用だらけ

のちに何代にも渡ってモデルチェンジを繰り返す大ヒットモデルのラビットの初代となるのがこのラビット S1/D11です。1946年ですからバリバリの戦後ですね。この時代、ものがありませんから流用が当たり前でした。

たとえば以前紹介した、1947年に登場した【ホンダ A型】←リンクしています

も軍用無線機の発動機を自転車に取り付けたバイクです。気になる方は以前の記事をチェックしてくださいね!そしてこのラビット S1/D11は、汎用のエンジンに、艦上攻撃機『銀河』に使用するはずだった(していた?)タイヤを組み合わせてスクーターとなっています。あくまでも飛行機用のタイヤが元凶となり、コーナリングができないという問題が発生したため、オリジナルタイヤの装着を余儀なくされたそうです。

画像は艦上攻撃機『銀河』

画像を見るとかなりタイヤが大きく見えますが、リアタイヤを流用していたのかな? わかりませんが・・・。ちなみにラビットスクーターは、当時アメリカ軍がブイブイ乗り倒していた『Powell:パウエルまたはポウエル』がモチーフになっているようです。

Powell Scooter P-48

おそらくこれがラビットスクーターの元ネタであろうと予想されるパウエルスクーターです。

画像はパウエル スクーター A-48

ラビットは4サイクルエンジンを採用していますが、見た感じ2サイクルっぽいですね。現代のバイクにくらべるとかなり貧相というか、頼りがいがあまり感じられません。詳しいスペックはわかりませんが、とても興味深いものを見つけました。以下の画像です。

画像はパウエル スクーター A-48のスペックシート?

ファストオーヴァー60mhp! ようするにトップスピードを示す表記だと思いますが、最高速度60マイルという意味でしょう。単純に60マイルは96.5km/h程度となります。排気量や馬力の表示はありませんが、コレマジ!? 速すぎません?

とにもかくにもこいつを元ネタにしてラビットは誕生したようです。製作は三鷹と太田の製作所の2ヵ所。三鷹製は排気口が横のスリットデザインが特徴のD11、太田は網目模様のスリットが特徴のS1となっています。ようするにスプリンタートレノとカローラレビン的な棲み分けなのでしょう。

ラビット  S1/D11のスペック

車名:ラビット

乗車定員(人):1

エンジン型式:F-11

エンジン種類:強制空冷4サイクル単気筒SV

総排気量(cc):135

内径×行程(mm):55×57

圧縮比:5.0燃料供給装置:アマルミクニ

H19B キャブレター最高出力:2ps/3,000rpm

最大トルク:0.51/2,200

全長(mm):1,547

全幅(mm):545

全高(mm):940

ホイールベース(mm):1,115

最低地上高(mm):100

車両重量(kg):75最小回転半径(m):1.7

燃料タンク容量(L):5.6

始動方法:押しがけ

変速機:自動変速Vベルト

クラッチ:自動遠心式

ブレーキ(前):なし

ブレーキ(後):ドラム

タイヤサイズ(前):3.50-5

タイヤサイズ(後):3.50-5

販売価格:11,000円

ラビット  S1/D11はスクーターの先祖様

この時代からVベルトの無段階変速機構ってあったんですね。ちなみにフロントブレーキは無し!

エンジンスタートは押しがけのみというルマン方式ではないですか!これなかなかハードル高いですね。最近のスクーターでいうと、パワー的にはスズキのチョイノリ並みといったところ。ちなみに宣伝のモデルは『高峰 秀子』さん(1924-2010年)です。

大物女優の高峰 秀子さんを起用するために、広告費用に高額支払ったという逸話もあります。このラビットスクーターが、現在のスクーターの基本形、元祖といったところです。