いにしえのバイクたち【陸王 V】

2019年4月6日

陸王って知っている人は知っているバイクですよね。逆に知らない人は知らないという・・・。

陸王という和製バイク(陸王 V:1937年7月)

画像は陸王 V(1937年)

そら当たり前か。陸王ってなかなかおもしろいバイクで、その誕生秘話も興味深いものとなっています。最近でもヴィンテージバイクフェスティバルなどでお目にかかることがあるかと。見た目はハーレーダビットソンのWLA(※下記参照)っぽいですよね。ハーレーダビットソンのWLAとの因果関係はいまいち不明ですが、陸王はハーレーダビットソンとはズブズブの関係なのです。

陸王の誕生は無茶ぶりから?

このハーレーダビットソンそっくりな陸王 V。実はこのバイク、1929年に発生した世界恐慌で、ハーレーダビットソンの値段が高騰してしまいました。で、当時の日本軍はハーレーダビットソンを大量に仕入れ、使用していたわけです。これじゃ高くて買えないゾ! となった日本軍は、三共製薬という製薬会社に「おい、ハーレー作れや!」と無茶ぶりをしたとか。

それはそれは現在のト○タがス○ルに「おい! ハチロク作れや! 知ってるやろ? あの漫画のやつや!」というあれに似ていなくもない? まぁ状況は違うにせよですね、とにもかくにも製薬会社にバイクを作らせ「三共内燃機」という会社を設立したわけですな。

というか、この製薬会社はハーレーダビットソンの輸入販売もしていたので当然といえば当然かも。で、あとのことをちゃんと考えてか、当時、ハーレーダビットソンのようなバイクを作る技術がなかったのか、三共内燃機に、ハーレーダビットソンと正式にライセンス契約させたわけです。

そんなことがあって、ハーレーダビットソンを作るアメリカの設備を日本国内に輸入して、陸王 Vの製作に取り掛かったのでございます。おそらく設計図なんかもハーレーダビットソンのものだったはずです。で、登場したのが陸王 V。この陸王というインパクトのあるネーミングは、公募だったとか。公募といえばニッサンのマーチも公募でしたね。




陸王 Vのスペックデータ

車名:陸王
型式:YFD
乗車定員(人):2
エンジン型式:VF
エンジン種類:空冷4サイクルV型2気筒 サイドバルブ
総排気量(cc):1207.956
内径×行程(mm):86.97×101.6
圧縮比:不明
燃料供給装置:日本気化器リンカート型 27mm
最高出力:28PS/4,000rpm
最大トルク:6.3kg・m/2,500rpm
全長(mm):2870
全幅(mm):1070
全高(mm):1240
ホイールベース(mm):1550
最低地上高(mm):100
車両重量(kg):260
最小回転半径(m):2
燃料タンク容量(L):16
始動方法:キック
変速機:左手動前進3段
クラッチ:左足動
ブレーキ(前):ドラム
ブレーキ(後):ドラム
タイヤサイズ(前):4.40-18
タイヤサイズ(後):4.40-18
販売価格:不明

スペックデータからわかること

この時代では当たり前なサイドバルブエンジンを採用し、28PSを出力していますね。現代のバイクではヤマハのドラッグスター400が30PSなので、それとくらべると、陸王 Vはトルクが半端なく強いことがわかります。ドラッグスター400は3.2kgf・mとトルクが売りのSR400よりも0.3kgf・m強いです。それでも陸王 Vにはかなわないって状況がわかりました。

画像はヤマハ ドラッグスター400 クラシック

確かに排気量は陸王 Vは1,200ccですからバカにできません。しかしサイドバルブエンジンの排気音はいいですね。ハーレーダビットソンといえばこの音! 陸王 Vも同じような重低音の効いた三拍子がたまらん!

ぶっちゃけ難しいですぞ

この陸王。乗りこなすには現代のバイクのようにはいきません。まず手動でオイルポンプを回します(詳しい方法は知りません)。そしてクラッチは左足で、変速は左手。交差点なんか慣れてないと乗りこなせないはず。こりゃたいへんだ!